スマートフォンの利用者は年々増加し、現在では個人保有率は6割を超えています。視覚に障害のある人にとっても、スマートフォンはメールや電話等のコミュニケーションツールとしては勿論、インターネットやアプリを利用して暮らしをより便利にするツールとなっています。
スマートフォンの中でも、全モデルに標準で視覚支援機能が搭載されている「iPhone」は、そのままでも視覚に障害のある人にとって役立つ情報端末です。ロービジョンの方が使用する際には、見え方に応じて画面の表示設定やタッチパネル操作の方法を個別に選択でき、見え方に変化があればいつでも変更ができます。「android」にもいくつかの視覚支援機能が存在していますが、端末による個体差、導入時の技術作業の難易度の点で「iPhone」の方が導入が容易と言われているため、今回は「iPhone」の活用方法に絞ってご紹介いたします。
標準で搭載されているアクセシビリティ機能をご存知ですか?
【設定方法】
ホーム画面>設定>アクセシビリティの順に開くと、視覚支援機能の設定が一覧表示されます。
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合成音声の画面読み上げと専用のタッチジェスチャー機能
『VoiceOver』と呼ばれる読み上げ機能は、画面を見ない前提で設計された専用のタッチ操作とともに使用します。
例:アイコンに触れるとアイコン名を読み上げます(触れても開きません)。開くときはダブルタップします(ダブルタップは画面のどこでもOK) -
ロービジョン者向け画面表示機能
ハイコントラスト、拡大、色の反転など、見やすい表示へ変更できます。視力の程度に応じて、拡 大と音声の併用も有効です。
音声アシスタント機能の活用
音声アシスタント機能Siriは、話しかけた声を認識して答えを返します。
話しかけるだけで使えるSiriは、煩雑なタッチ操作を省き、導入を容易にします。
アプリの追加で広がる可能性
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カメラ機能を利用したアプリ (『Envision AI』 『Microsoft seeing AI』等)
撮影した画像を遠隔サーバに送り、最先端のAI技術で解析し、認識結果を端末へ送り返す方式のアプリが登場しました。端末内で処理していた従来アプリに比べて、認識精度や対象範囲は大きく改善されました。書類の他、色、明るさ、紙幣、QRコード、物体、人物なども認識して読み上げます。
最新のiPhone上位機種では、対象までの距離を知らせる機能も追加されました。
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外出支援アプリ (『Blind square』等)
現在地周辺の店舗、施設、駅、交差点などの情報を読み上げてくれるアプリです。
目的地周辺の情報を調べられるシュミレーションモードは、外出前の下調べにも便利です。
一般のマップアプリとの連携機能もあり、目的地を選んでナビを開始できます。 -
専用の電子図書アプリ (『Voice of daisy』等)
視覚障害者情報提供施設が作成したデジタル録音図書Daisy(デイジー)をインターネットから検索、ダウンロード、再生するためのアプリです。
トピックス
○視覚障害者用の交通信号機アプリ
2021年度、新型の視覚障害者用交通信号システムが試験的に導入されます。
この信号機では、信号の情報をスマートフォンアプリへ知らせる仕組みとなっています。
○鉄道料金の割引アプリ
障害者手帳の提示で受けられる公共交通機関の料金割引を、マイナンバーを登録した専用アプリ画面の提示でも可能とするものです。
おわりに
社会の様々な場面でスマートフォンをはじめとした情報端末の普及が進んでいます。患者様やそのご家族に、見えづらくても、音声や画面設定の変更などでスマートフォンが使用できること、そしてその有用性をお伝えいただければと思います。また、こうした情報端末に関する操作練習が受けられる場所については、下記お問い合わせ先にご相談ください。
*問い合わせ先
名古屋市総合リハビリテーションセンター 自立支援部視覚支援課
名古屋市瑞穂区弥富町字密柑山1-2 TEL 052-835-3523
社会福祉法人名古屋ライトハウス情報文化センター
名古屋市港区港陽1-1-65 TEL 052-654-4521