はじめに
ロービジョン学会のHPでは、「ロービジョンケアとはよりよく見る工夫（例：視覚補助具、照明）、視覚以外の感覚の活用（例：音声機器、触読機器）、情報入手手段の確保（例：ラジオ、パソコン）、その他の生活改善（例：点字図書館、生活訓練施設）、進路の決定（例：特別支援学校、職業訓練施設）、福祉制度の利用（例：身体障害者手帳、障害年金）、視覚障害者同士の情報交換（例：関連団体、患者交流会）等ができるよう情報提供し、諸種の助言、指導あるいは訓練を行う。」とあります。このように支援が多岐にわたるため、開始する前はロービジョンケアって大変そう、出来るかな…？と感じていました。今回は、そんな私たちが行っているロービジョンケアについてご紹介させて頂きます。
ロービジョン外来の予約
当院では、2015年11月にロービジョン外来を開設し、木曜午後に受診枠を設けて、視能訓練士がメインで支援を行っています。
日常外来の中で医師、視能訓練士、看護師が、それぞれの立場で気になる（視覚で困っている）患者様が受診したら主治医に報告をし、主治医からロービジョンケアの紹介をしてもらい予約をとっています。医師からは一緒に話を聞いてくれるご家族がいれば同伴していただくことと、お一人の受診時間は十分にとっていますが当日、聞き漏らさないように普段、困っていることを箇条書きにするなど頭で整理しておいてもらうように説明してもらいます。また、視能訓練士もしくは看護師からどのようなことを行うかの補足説明を適宜行って、自宅で使用している視覚補助具を持参してもらうことなど再確認します。
ロービジョン外来の受診当日
ロービジョン外来に受診されたら、まず、時間をかけて問診を行います。ここでは、患者様の話にじっくり耳を傾けます。その後、ニーズに対応できるような視覚補助具の処方を行います。さらに
〇歩行に不安のある方には、名古屋市総合リハビリテーションセンター（以降：リハセン）または名古屋ライトハウス（以降：ライトハウス）の歩行訓練士に当院のロービジョンリハ外来で白杖歩行の指導をして頂き、それ以上の訓練を希望された方には専門施設に繋ぎます。
〇学生支援には、名古屋盲学校や愛知教育大学で視覚障害を専門にされている先生に繋ぎます。
〇心理的ケアには、障害者団体に取り継ぎます。
〇経済的・社会的支援が必要な方には、当院のメディカルソーシャルワーカーやロービジョンリハ外来に来られるライトハウスやリハセンの社会福祉士に繋ぎます。
このように、視能訓練士が、それぞれの支援施設や当事者団体などと顔つなぎを行い、窓口の役目を果たしています。しかしながら、現在でも、時に、「どこに繋いだら良いのかわからない」、「どのように支援をしたら良いのか分からない」と難しい場合があります。その場合は、リハセンやライトハウス、場合によってはロービジョンケアを行っている病院や当事者に知恵を拝借し、患者様には、次回の受診時に回答をするようにしています。
眼科スタッフとの意識共有
他職種にロービジョンケアを理解してもらうために、年に一回、眼科スタッフにシミュレーションゴーグルを使用し視覚障害の体験とリハセンもしくはライトハウスの職員に指導を頂き、診察室までの安全な誘導方法の勉強会を開催しています（現在は、コロナ禍で休止中）。
実際のロービジョン外来での支援は、視能訓練士が窓口となり支援を行っていますが、看護師もロービジョン患者に問診をとり、その結果を医師や視能訓練士に共有してくれる等、積極的に介入してもらえます。視能訓練士が日常外来の検査で忙しくしていても、医師や看護師から率先してロービジョンケアで実施したことや患者さんの状態を聞いてもらえることがあり、眼科スタッフが意識共有してチームワークが向上し、さらなる支援に結びついています。
院内研修の様子
視能訓練士の地域連携
地域の視能訓練士に対しては、県内の視能訓練士の連携などを目的に３年前に「愛知視能訓練士会」が発足しました。そこでは、ロービジョンケアにとどまらず、地域の勉強会などの情報が発信されます。このような場を利用しながら地域の視能訓練士と支えあって支援を行えるようになれば良いなと思っています。
最後に
ロービジョンケアは、医療・教育・訓練施設・関連団体等が一丸となって支援を行う必要があるように、私自身もロービジョンケアは、多くの他職種の支えと協力があって行えていると感じています。
私たちの今後の目標として、患者様にロービジョンケアを広く知ってもらい患者様から「ロービジョンケアというものを受けてみたい」とおっしゃってもらえるようになると良いなと思っています。
