障害のある方や、精神の状態に不安のある方が働く際の選択肢のひとつとして「福祉的就労」があります。
「福祉的就労」とは、障害者の一般就労(企業などへ就職し、雇用契約を結んで働くこと)が難しい方が、障害福祉サービスの中で就労の機会を選択しながら働くことです。
利用者は、自身の障害の症状や体調の状態に合わせて、福祉サービス事業所内で必要なサポートを受けながら働くことができます。
福祉的就労を希望する方は、障害者総合支援法に基づく就労継続支援事業所や、地域活動支援センターなどと利用契約を結び、作業をおこないます。そこで、今回は福祉的就労の種類を解説していきます。
福祉的就労の種類
障害者総合支援法に基づいた就労支援のサービスを受けながら作業できる場所は、主に「就労継続支援A型事業所」、「就労継続支援B型事業所」、「地域活動支援センター」の3つとなります。
〇就労継続支援A型事業所
特徴は、利用する方と事業所が雇用契約を結ぶ点です。
労働基準法に準じて業務をおこなうため、基本的には最低賃金以上の給与が支給されます。実際の作業を通し、働くうえで必要な技能を得て、最終的には一般就労を目指します。
仕事内容は、基本的に一般就労と大きな違いはありません。しかし、短い時間からでも働きやすく、1日あたり4~8時間程度勤務します。
〇就労継続支援B型事業所
利用する方と事業所が雇用契約を結ばない点が特徴です。そのため、就労継続支援A型事業所のように雇用契約を結んで働くことが難しいという方でも、障害や体調に合わせて柔軟に作業できます。
ただし、法律で定められている最低賃金額にはならないことが多く、作業に対して支払われるお金は「賃金」ではなく「工賃」と呼ばれます。
就労継続支援B型事業所での目的は、工賃をもらうことだけでなく、サポートを受けながら、仕事で必要な能力・スキルを身につけていく就労訓練の側面もあります。
障害等の状況に合わせたサポートを受けながら、自分の出来る範囲から始めることができることもあり、現在、30万人以上の方が就労継続支援B型事業所を利用しています。
〇地域活動支援センター
障害者総合支援法に基づき、創作的活動・生産活動・社会との交流の機会を提供している機関のことです。ただし、地域活動支援センターの目的は「生産活動の場の提供」であり、就業ではないため、工賃が発生しない場合もあります。
*ここからは、多くの視覚障害者が働いている事例として、福祉的就労(就労継続支援事業B型)の場である光和寮をご紹介いたします。
主な作業内容
・ペン、文具などの組立、加工作業 ・セットアップ作業 ・袋詰め作業
・イベントグッズほか各種製品の組立検品作業
・印刷物の製作や封入封緘作業(点字含む)
・反訳作業(注:反訳とは、会議などの音声(データ)の文字起こしを指します)
・マッサージ治療(鍼・あんまの施術)など
作業環境の工夫
見えない・見えづらい人への環境づくりとして、安定した品質や効率の良い作業ができるよう作業者の意見を取り入れて、治具を活用するなど本人の適性に合わせ作業を提供しています。
治具以外にも似たような製品が複数並ぶ作業の時は、製品ごとの入れ物の高さを変えるなど、音声や触覚で区別ができるように工夫して作業に取り組んでいます。
作業風景
反訳作業では、録音された音声を聞き取り、文字のデータ化をしています。録音されている言葉のうち「ケバ」(「あー」「えー」など無意味な音、口癖の「要するに」「ですね」などの無機能語、言い直したときの言い直し前の発語など)を取り去り、録音時の雰囲気を残しつつ、読みやすい文章にしています。