ロービジョンケア関連情報

　現在では多くの企業で広く受けいれられるようになった「障害者雇用」ですが、障害に関わる法律や障害福祉施策等、障害者を取り巻く状況は大きく変化している中で、視覚障害者の就労状況も近年大きく変化をしています。

　以前は視覚障害者の職業は非常に限られたものでしたが、現在ではICT技術や就労支援機器の発展・普及に伴い事務的職業で就労する視覚障害者も増えています。

障害者雇用とは

　障害者雇用は障害者雇用促進法（障害者の雇用の促進等に関する法律）で定められた義務です。従業員43.5人以上の民間企業は、企業全体の常用労働者の2.3%以上（2021年3月1日時点）の障害者を雇用する必要があります。

様々な就労形態

○あんま、鍼、灸

　視覚障害者の職業として最も知られているものが「あはき業」または「三療業」と言われる「あんま、鍼、灸」です。かつては視覚障害者の職業といえばこの職業というほど、視覚障害者が従事することが多かった職業です。現在でも視覚障害者の職業的自立の重要な一分野であり、治療院を開業したり、施設等への訪問マッサージに従事されています。近年は企業の社員として健康増進に寄与する「ヘルスキーパー」も増えています。

○事務的職業

　ICT技術の発展により、重度の視覚障害者であってもパソコンによる事務的職業をこなすことができるようになりました。このようなICT機器の発展は今後も進み、事務的職業に就く視覚障害の方もますます増えていくと考えられます。

○その他

　プログラマー、教員、音楽家、相談員、翻訳、弁護士、医師等専門知識を活かして就労されている方もいます。また、スーパーでの品出し、調理補助等の作業系や接客等で就労されている方もいらっしゃいます。

○福祉的就労

　一般企業等で就労することが難しい方に生産活動等の機会を提供し、能力の向上のために支援を行う「就労継続支援A型事業所（雇用契約有）」と「就労継続支援B型事業所（雇用契約無）」があります。A型は実際の作業を通じて職業技能等を習得し、最終的には一般企業等への就労を目指します。B型は障害等の状況に合わせて自分のペースで働くこともでき、A型や一般就労への移行に必要な職業技能等を習得することができます。

就労するために必要なことは？

　パソコン操作等具体的に業務を遂行するために必要なスキルを身につけ、できることを増やしていくことが大切です。また、就労する上では安心安全な通勤も重要になります。企業も通勤労災等のリスクには敏感ですので、自信を持って通勤できるよう通勤訓練が必要になる場合があります。

就労関連施設・当事者団体

○社会福祉法人名古屋市総合リハビリテーション事業団　

　視覚訓練部門と就労支援部門が連携して職業評価・職業準備訓練・新規就労や復職支援、就労継続支援、定着支援等を実施しています。

○社会福祉法人名古屋ライトハウス　東ジョブトレーニングセンター

　ITスキル評価、事務訓練、求職活動支援を実施。就労定着支援も併設しています。

○社会福祉法人名古屋ライトハウス　情報文化センター

　求職者・在職者対象の職業訓練、職場の訪問指導等のサービスを提供しています。

○社会福祉法人愛知盲人福祉連合会　盲人ホーム明生会館

　有資格者（あんまマッサージ・指圧師・灸師）を対象に、開業や技術の向上を目指すための技術指導や研修を行っています。

○NPO法人　タートル

　就労支援を主とした当事者団体で、会員の体験をもとに相談に乗りつつ、眼科医や支援機関などと連携を図りながら、新規就労や就労継続のための支援を行っています。

まとめ

　かつては、就労中に視力・視野の状況が悪化し仕事でできないことが増えてくると、肩身が狭い思いをしたり、あるいは会社から肩叩きにあって、自ら退職をしてしまう方が多かったです。ただ、近年は眼科の先生方をはじめ、患者さんに対し、ロービジョンケアやリハに関する情報が在職中など早い段階で伝わるようになったことから、退職前に相談に繋がり、そのまま仕事が続けられる方も増えてきました。

　失業を防ぐためにも「視覚障害があっても働ける可能性がある、自ら退職する前にまずは相談」とのメッセージを患者さんに伝えていただくことが大切です。新たに就労先を探すことも可能ですが、どうしても時間と根気が掛かる場合や待遇面で前職より劣る場合も多いため、特に在職中にお困りの方がいらっしゃれば、早めに下記問い合わせ先をご紹介ください。