見えない、見えづらい状態となると、それまでの仕事をすることが難しくなり収入が下がることや、失職し収入がなくなることがあります。また、仕事をしていない方でも老後など将来の生活への不安が出てきます。特にまだ老齢年金が受給できない世代の方にとっては、収入の安定が生活の安定にとって重要な要素の一つとなります。
障害年金の取得について、患者さんから相談される場合や先生方から取得を進めるべきかご判断に迷う場合もおありかと思います。障害年金とはどんなものか、どんな方が受け取ることができるのかなどについてご紹介させていただきます。
障害年金制度について
障害年金について説明する前に、公的年金制度について説明します。公的年金は、自営業の方などが加入する国民年金と、会社員などの方が加入する厚生年金に分かれています。20歳以上60歳未満の方は、公的年金制度に加入する義務があり、働き方などによって国民年金のみに加入されている方、国民年金と厚生年金のどちらにも加入される方がいます。公的年金は基本的には65歳から年金を受け取ることが可能です。
障害年金は、公的年金の加入者が病気やケガによって生活や仕事が制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けた時に、国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」または「障害手当金」が請求できます。
どんな方が受け取れるの?
障害年金を受け取るための要件は、次の3点あります。
1.公的年金に加入している期間に、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師の診察を受けた日(初診日)があること。
2.公的年金の保険料納付要件について、次の①か②のどちらかを満たすこと。
①初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3の期間について、保険料を納付している、または免除されていること。
②初診日が65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
3.視力や視野の障害の程度が、次の表の基準にあてはまること。
※20歳未満の時に初診日がある場合は、上記3の要件のみ満たせば障害基礎年金が受給可能です。
※次の表の1級~3級は、障害者手帳の等級とは異なりますので、ご注意下さい。
※厚生年金加入者は次の表に当てはまらない視力や視野でも、障害手当金を受け取ることができる場合があります。障害手当金は、一時的に支給される給付金です。
◆障害の程度 : 障害の状態 (障害年金の「眼の障害」の令和4年1月1日改正)
・障害基礎年金1級・障害厚生年金1級 :
視力の良い方の眼の視力が0.03以下のもの、または
視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの
・障害基礎年金2級・障害厚生年金2級 :
視力の良い方の眼の視力が0.07以下のもの、または、視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの
両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
求心性視野狭窄または輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの
・障害厚生年金3級 :
視力の良い方の眼の視力が0.1以下のもの
両眼開放視認点数が70点以下のもの
両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下のもの
(障害基礎年金は1~2級までで、3級はありません)
受け取れる金額はどれくらい?
障害基礎年金は、1級に該当する方は月額81,343円(年額で976,125円)、2級に該当する方は月額65,075円(年額で780,900円)です。子供がいる場合は第2子までは一人当たり年額で224,700円、第3子からは一人当たり74,900円の加算があります。
障害厚生年金の額は、厚生年金に加入していた期間の長さ、給与額などにより計算されます。例として、厚生年金に20年間加入し、平均年収が500万円、配偶者あり、子供1人で障害厚生年金1級に該当する方は月額19.5万円(年額230万円)程度受け取ることができます(障害厚生年金の額には、障害基礎年金の受取額が含まれます)。
申請する際には医師の診断書が必要です。また初診日の証明が重要です。
患者さんが障害年金を受給するための手続きをする際には、申請書などの必要書類を提出する必要があります。障害基礎年金はお住まいの市区町村役場または年金事務所、障害厚生年金はお近くの年金事務所が申請の窓口になります。申請時には、日本年金機構の様式の医師の診断書が必要となります。
また、申請に当たっては、初診日が公的年金に加入していた期間であるかが非常に重要であり、医療機関の作成する「受診状況等証明書」がその証明となります。網膜色素変性症、ミトコンドリア病など遺伝性の疾患の初診の場合は、今後の障害年金に関わってくる可能性があるため、気にしていただけると患者さんの年金申請の助けとなると思います。
まとめ
障害年金は、障害の当事者でも知らない方が多いですが、経済的な安定は生活において重要な要素になりますので、受け取ることができそうな視力や視野の場合は先生方からも患者さんにご紹介いただければと思います。障害年金制度についてはこのコラムで説明しきれなかった部分があります。日本年金機構が作成している「障害年金ガイド」ではより詳細に説明があり、年金機構HPから読むことができます。また同様のYouTube動画版もありますので、ぜひご確認ください。
*問い合わせ先
名古屋市総合リハビリテーションセンター 自立支援部視覚支援課
名古屋市瑞穂区弥富町字密柑山1-2 TEL 052-835-3523
社会福祉法人名古屋ライトハウス情報文化センター
名古屋市港区港陽1-1-65 TEL 052-654-4521